令和時代の就活、採用活動を占う②
佐藤です。
前回に引き続き、令和の就活、採用活動を占います。
Q:令和時代の就活生をどう整理すればよいか
x軸を長期インターンなどの経験値
y軸を学歴
として画にしてみます。
Q:なぜ学歴とインターンの経験値を軸に用いるのか
学歴:長らく、様々な意味合いで有効な選考基準として広く認識されているため
インターンなどの経験値:新しく有効な選考基準として広く認識されそうであるため
です。
さらに詳しい理由を知りたい方はメッセージください。
Q:ここから何が言えそうか
就職優秀層(複数の企業から内定<オファー>を獲得する層)が変わります。
便宜的に各象限に呼称を付けます。
これまでの新卒採用市場においては、
だったのですが、
極端に言うと、今後はこう変わります。
超が付く売り手市場の今、現実路線として
こう落ち着くと考えられます。
Q:今までもこうだったのではないか
はい、職種別採用を行ってきた企業や人事の新卒採用チームが強力な一部の企業(ポテンシャルとは何か、について言語化がきっちりなされている企業)から見ると新鮮味に欠けると思います。
私がここで言いたいのは
・ポテンシャル採用を行ってきた企業がすべからくこうなるであろうこと
・『この整理は“中途採用”のそれと同じ』であるということ
です。
中途採用の場合はx軸が、「職務経歴における実務経験や各種の実績、保有している資格など」になると考えれば良いと思います。
就活生が在学中に各企業の長期インターンにおいて実務経験を積むことにより、このように新卒採用と中途採用の「評価の手法」による垣根が曖昧になっていきます。
明日以降も、このテーマを引っ張ります。
令和時代の就活、採用活動を占う①
佐藤です。
長らく平成最後の新卒採用活動の荒波に呑まれており、久し振りのブログ更新は令和初となりました。
直近4カ月間で行った面接対象者は2,000名を超え、個としては日本トップクラスの一次情報量に触れた中で様々な気付きがありました。
それを棚卸しながら、令和の就活、採用活動を占ってみようと思います。
Q:令和の就活、採用活動は平成のそれと異なるのか
間違いなく変わります。
「学生が在学中に企業の長期インターンシップに参加すること」が当たり前になりつつありますが、それによって今まで存在していた社会人と学生の境界線が曖昧になってきていて、将来的にはほとんどなくなると考えられます。
社会人と学生の境界線が曖昧になることは、
- 人材/人事業界において、中途採用(転職活動)と新卒採用(就職活動)の境界線が曖昧になることと同義
- 求職者側において、自身のライバルが横(同学年)だけでなく縦に広がることと同義
だと考えます。
Q:学生が長期インターンシップに参加することが当たり前になると何が変わるのか
新卒を採用する企業側の評価ポイントとそれを捉えた学生の動きです。
<企業側の評価ポイントについて>
これまでの新卒を採用する企業側の「学生に対する評価ポイント」は、「社会人としての実務経験がない」ということを前提にして考えられていました。
しかし、一般的に知られている(または想像される)以上に、今のインターンシップ生には裁量が与えられていて(無茶ぶり、丸投げされているとも言える)、若手社会人と同等の経験値や入社後即戦力になり得るスキルを持った学生が採用市場に次々と出現しています。
彼らはその経験値やスキルを武器に企業の選考に参加し、当然のように他の候補者を圧倒する高い評価を獲得します(ただの高学歴層は幼く見えてくる)。そうしたことが、長期インターンシップ経験を評価すべきでは?と企業側の評価ポイントの見直しを迫ることになります。
<学生の動き>
他方、長期インターンシップによって洗練された学生が与える影響は企業側だけではありません。同じ大学の後輩に対しても、自らの就活経験から「長期インターンシップ参加の重要性」を説いていきます。
その重要性とは
- 自分が何をやりたいのか、何ができるのかを予め明らかにできる点
- インターン経験が企業から高評価獲得に直結する点
この2点に集約すると言えます。
この話に影響を受けた後輩学生はその先輩の背中を追い掛けることになります。
明日以降、このテーマでしばらく展開していきましょう。
【考察➄】就活ルールの廃止について
佐藤です。
東京は明らかに涼しく過ごし易くなってきました。
一方で気温差に負けないよう体調管理に気をつけたいところです。
さて、“就活ルール廃止”の考察を続けます。
Q:そもそも④はどういうことか
④2.と3.の間で残りのほぼ全ての企業が採用活動をする
とはどういうことか、まず
2.は、現時点の採用のバイイングパワーが極めて強い少数の企業群
であり
3.の採用活動の開始が“就活市場のSTART”
2.の採用活動の終了が“就活市場のFINISH”
となります。
※一部の例外については、ここでは大局を考えたいため割愛します
2.と3.に該当しない企業群は、その間で採用活動を行わざるを得ません。
なぜなら
2.より早く動いても、市場に学生が参入しておらず
3.よりも遅く動いても、市場から学生が撤退してしまっている
からです。
先述の画に立ち返ると
この画の④です。
つまり6月頃~翌年の6月頃までが活動期間となり、まさに
通年採用
になります。
※③のベンチャーや外資も、②がある以上早期に活動終了することは難しいので通年採用です
Q:④はどう影響を与えるか
この青い領域はどうなるのかというと、
アクティブな就活生数が緩やかに増えていき、常時全体の半数近くが動いているような形状になります。
なぜなら
粗くこう考えると
第一象限(濃い青の層):早期から就活を始め、どんどん市場から撤退して数が純減していく
第二象限(ピンクの層):①早期に就活を始めるが後半戦まで就活を継続し続ける人(こちらは30%程度)と、②後期に就活を始め短い期間しか市場にいない人(こちらは70%程度)が含まれる
第三象限(オレンジの層):①早期に就活を始めるが後半戦まで就活を継続し続ける人(こちらは30%程度)と、②後期に就活を始め短い期間しか市場にいない人(こちらは70%程度)が含まれる
第四象限(薄い青の層):早期から就活を始め内定を獲得、しかし意思決定は先延ばしにして省エネ就活を続けていく
第一~第四象限の合算なので
就活早期:第一と第四の全部+第二と第三の①
就活中期:第一の一部+第二と第三と過半数+第四の全部(第四は省エネ活動化)
就活後期:第二と第三と第四の全部(第四は省エネ活動化)
と予測し、
アクティブな就活生数が緩やかに増えていき、常時全体の半数近くが動いているような形状になると考えました。
Q:就活ルール廃止のbeforeとafterは
このような感じに変化すると考えます。
【考察④】就活ルールの廃止について
佐藤です。
今年の夏は毎週末台風の脅威に曝されている気がします…。
被災地の一日も早い復興をお祈りします。
さて、“就活ルール廃止”の考察を続けましょう。
Q:就活ルール廃止は今の学生の動きにどう影響を与えるのか
前回の投稿で、「就活は前倒しになる」と推測し、その理由は
- 入社から半年前の内定式開催(10月)はおそらく固定
- 現採用市場の横綱:総合商社の採用活動期間もおそらく固定
- ベンチャーや外資の内定出しが早まっても学部2年生の後期が限界
- 2.と3.の間で残りのほぼ全ての企業が採用活動をする
と説明しました。
それを画で表現すると、
こうなります。
各矢印の番号は“上述の4つの理由の番号”
青い領域は“影響を与えそうな範囲”
を示しています。
Q:①②はどう影響を与えるのか
①と②はセットだと考えます。
①が楔となりそこから左方向(赤い矢印)へと、採用のバイイングパワーの強い総合商社から順に、採用活動のピークが並ぶようなイメージです。
今更ですが、この場合の採用のバイイングパワーは“社名の社会的認知度の高さ”と解釈してもらうとシンプルです。
※採用のバイイングパワーが強い ≠ 優良企業 という図式は大切です。
つまりこの時期は就活生の大半が選考に参加したい企業が採用活動を行うため、2人に1人程度の割合以上では就活を行っていると予測します。
Q:③はどう影響を与えるのか
③の青い領域は「ベンチャーや外資が選考と内定出しを前倒す限界」と予測した時期です。 この場合年明け早々から会社説明会などが始まる必要があります。
こうなると、現在赤い領域にいる「就活早期活動者(第一波)」の層が地滑りを起こす形で赤い矢印の方向へと流れ込みます。
その後この「就活早期活動者(第一波)」の中から内定獲得者が現れると、次の「就活早期活動者(第二波)」に対するインフルエンサーとなり、前へ前へと連鎖的に流れ込むようになります。こうして全体の山が前へと動くことになります。
④については次の投稿に持ち越します。
【考察③】就活ルールの廃止について
佐藤です。
テニスプレイヤーの大坂なおみ選手が、グランドスラムを初制覇して日本中が湧いていますね、個人的には錦織選手にも是非その栄冠を掴み取って欲しいと願っています。
さて、それとはまったく関係のない“就活ルール廃止”の考察を続けましょう。
【前提の確認】Q:今の就活で学生の動きはどうなっているのか
今はこんな感じだと前回の記事でお話ししました。
Q:就活が前倒しになるとはどういうことか
私は就活ルール廃止によってこんな形状に近づくと予想します。
ここで言いたいことは、
多少前倒しになるとは言え、極端に(際限なく)早くはならない
※一部の声の大きなオトナが心配している事態にはなりません
ということです。
私が上記ラインを描いたのは企業側の動きとして
- 入社から半年前の内定式開催(10月)はおそらく固定
- 現採用市場の横綱:総合商社の採用活動期間もおそらく固定
- ベンチャーや外資の内定出しが早まっても学部2年生の後期が限界
- 2.と3.の間で残りのほぼ全ての企業が採用活動をする
と考えたからです。
Q:入社から半年前の内定式開催(10月)はおそらく固定?
人事は、新卒の入社のための諸手続きや研修の実施のために、半年前にはメンバーを固めておきたいのです。
Q:現採用市場の横綱:総合商社の採用活動期間もおそらく固定?
採用のバイイングパワーがある企業は、採用活動を極端に短く終わらせることができます。では「いつ活動するか」をどう決めるかと言えば「どこが最も効率(労働力・予算ともに)が良いか」という視点に基づきます。そうなると「“内定式をついでにできる”内定式の直前期」が最も合理的な選択肢になります。
総合商社の就職人気にも翳りが感じられますが、しばらくは現状維持でしょう。
しかし、ここが今後崩れるとまた状況が一変すると予想されます。
Q:ベンチャーや外資の内定出しが早まっても学部2年生の後期が限界?
ポイントが2つあります。
まず1つ目、この式が成り立ちます。
内定出しの時期を早める = 学生のフォローをする期間が長くなる
学生のフォローをする期間が長くなると
- フォローのための予算が高くなる(人もお金も)
- 内定辞退のリスクが上がる
- 内定辞退によって受けるダメージが増える
人事にとって都合の悪いことばかりです。
ただ採用のバイイングパワーが弱い企業(外資は弱くありませんが…)は、
他企業に先んじて内定を出さないと内定すら出せない = そもそも採用できない
という葛藤があるため、ギリギリまで前倒しになると考えられます。
次に2つ目、「あまりに早過ぎると学生を評価するための材料が極端に減ってしまう」ということです。
例えば現状、丸3年間分の大学生活を評価対象として選考できているとすると、
内定出しを前倒す→選考を前倒す→学生の持つ経験(評価材料)が減る
ことになり、早めれば早めるほど評価材料が少ない状況でその人物の将来性を判断しなければならず「選考の難易度が跳ね上がる」ことになります。
以上2つがなんとかバランスするのは、入社から逆算して2年前なのではないかと考えました。
次回はこの続きを。
【考察②】就活ルールの廃止について
佐藤です。
少しずつですが空気が秋めいてきたように感じます。
他方、関西地方の台風被害や北海道の地震など心配ごとは尽きません。
さて、“就活ルール廃止”のテーマで考察を続けたいと思います。
安倍総理の「ルールを順守して」発言や各教育機関の反対もあって、2021年度卒の就活生からいきなりルールが廃止されることは考え難いと思いますが、緩やかに廃止の方向に向かうのではというのが私の考えです。
Q:就活ルール廃止によって何が変わるのか
多くの人が声を揃えるように、私も就活が前倒しになると思います。
具体的にどうなりそうかについては明日以降の記事で言及します。
Q:今の就活で学生の動きはどうなっているのか
画を書いてみると大体こんな感じです。
縦軸はアクティブな就活生数を、横軸は時期を表します。
<ステップ1>
学部3年(または修士1年)次の6月頃から全体の2~3割程度の就活生が夏季インターンシップなどの情報収集や選考対策に動きだします。
<ステップ2>
学部3年(または修士1年)次の10月頃(大学の後期日程開始)から夏季に第一波として動いた全体の2~3割の就活生がインフルエンサーとなり、活動していない層へ影響を与えます。結果、追加でもう2~3割の就活生が年末年始の冬季インターンシップに向けて動き始め全体の半分近くの勢力に拡大します。
<ステップ3>
3月の大手有名就活ナビサイトのオープン(広報解禁)直前あたりから、大学内での合同企業説明会などが熱を帯び始め、それに呼応する形で残りの非活動者が次々と活動を開始します。大手有名就活ナビサイトのオープン~2週間程度でピーク(全体の8~9割程度が活動者へ)を迎えます。
<ステップ4>
5月のGW前後から大企業からの内定を確信した層や中小ベンチャーへの就職を意思決定した層を中心に就活が沈静化し始めます。6月の大企業選考解禁から3週間程度で一気に内定が市場へとばら撒かれ、7月意向は就活を継続する層が少数派に変わります。
<ステップ5>
10/1の内定式をめがけて就活生の動きは終息へ向かいます。
以上が全体像です。
<補足>
・アクティブな就活生とは、就活のナビサイトに登録するだけではなく、実際に足を動かしてインターンや説明会などに参加している学生のことです。
明日以降は以上を前提として、就活ルール廃止により
- 学生の動きがどうなりそうか
- 企業の動きがどうなりそうか
について引き続き考えていきたいと思います。
【考察①】就活ルールの廃止について
佐藤です。
今日のお題は、2019年度卒の就活が落ち着き、
2020年度卒向け夏季インターンシップが盛況となる中、
連日メディアの話題を攫っている本テーマについて。
個人的に言いたいこと満載なので、
このテーマでしばらく引っ張るかも知れません。
Q:就活ルールは廃止すべきか
廃止で良いでしょう。
まず、策定から4年も経たないうちにすっかり形骸化してしまっているこの状況を冷静に分析する必要があります。
「今の就活ルールを見直して最適化する」という選択肢もありますが、
- 外部環境(ビジネス市場における前提など)は今後も変化し続ける
- その変化のスピードは一層速まることが予想される
以上より、現行ルールを見直して公表される頃にはまたすっかり前提が動いてしまっていてその時の市場にそぐわず形骸化するという状況が容易に想像されます。
これが是であれば、リスクの検討・対策を済ませた上で廃止で良いでしょう。
他方、“就活ルールが時代の変化についていけていない”というのは、“それを定めた政治やそれを求める教育、それを受け入れた経団連が時代の変化についていけていない”ということとほぼ同義であるかも知れません。
仮にそうなら負のレガシーと化している
・大学側の捉える「学業の在り方」
・政府側の捉える「学生(旧時代的な)ファーストという考え方」
こそ見直される必要があるでしょう。
Q:時代の変化に付いていけていないのは経団連、政府、教育機関なのか
個人的には“その可能性が高い”と考えます。
その根拠として、例えばこの記事にある世界時価総額ランキングを見ると
30年前とガラッと顔ぶれが変わっています。
その変化に驚くとともに、平成元年ランキング上位の日本企業は軒並み今の経団連加盟企業であることに気が付きます。
そしてもうひとつ、経団連加盟企業に今の日本の経済成長を支えているはずのIT企業が少ないことにも違和感を感じます。
経団連企業会員一覧
http://www.keidanren.or.jp/profile/kaiin/kigyo.pdf
参考資料
※このグラフは下記の公表データを基に筆者が作成しました
総務省|平成28年版 情報通信白書|日本の産業別実質GDPの推移
他方、奇しくも新卒一括採用が始まったのは1985年頃(およそ30年前)だそうです。
新卒採用の歴史|人事が知っておきたい新卒採用の変遷 | HR NOTE
色々と感じることがありますね。
A:あとがき的なもの
ルールがなくなることによって、企業が学生を拘束することが常態化し、学生の学業の妨げとなる事態を心配する声がありますが、現代はソーシャルメディアの力によって組織の不正が暴露されやすい時代になってきているので見えない抑止力は働きそうだなと感じます。