「大企業からベンチャー企業へは転職し易い」という都市伝説は本当か
佐藤です。
平川が全然書かない状況の中、私の投稿が続きますが
彼はちゃんと存在します。そのうち顔を出すと思います。
さて、就活生の間でまことしやかに語られる掲題が本日のテーマ。
これに対して私が思うことは、
「間違っている」
です。
そもそも大企業からベンチャー企業へ転職しようとする人は少数であるということと
実際に転職できる人はごく僅かということが実態です。
新卒で大企業に就職し10年勤め、役職が課長以上、年収が1,000万円近くになることをひとつのモデルとします。その場合、数々の社内の昇進試験を突破し着実にステップアップ、それなりの予算や人員を動かせるようになった一方、プライベートではマンション購入、結婚/出産/育児、親の介護と考えることが山積しています。その状態で「仕事における大いなるチャレンジ」を求めて本気でベンチャーへ転職したいと思う人がどの程度いるのでしょうか。
「その前提を押しのけ、大企業に勤めつつ実際に転職活動される方」の相談に一定数乗ってもきましたが、彼らのほぼ100%が最終的に「現職に残る」という決断をしています。代表的な理由は、「今の生活水準を下げられない(本人だけでなく家族の意向も)から」か「ひとつもオファーが得られなかったから」です。
Q:なぜ魅力的なオファーが得られないか(得難いか)
一部の例外を除き、ベンチャー企業の立場から見ると大企業に勤めている方々は総じて“割高な人材”に見えます。言わずもがな、全体的に大企業の方が給与平均の水準が高く、より限定的な仕事をしているように見えるからです。
その前提により、ベンチャー企業はその人物に対する評価が辛くなったり、「今の給与額をそのまま支払うわけにはいかないけど、下げてでも挑戦したいということであれば是非」というオファーの出し方にならざるを得ません。「仕事における大いなる挑戦権」と「現給与額」がトレードオフの関係となり、転職活動中の方にとって最大のスイッチングコストになっています。(大企業における人材定着施策が成功しているとも解釈できますが…)
またベンチャー企業としても「大企業出身の人材を多少無理をしてでも採用したい」わけではありません。さらなる事業拡大のために求める優秀な人材を、「外部環境の素早い変化に柔軟に対応でき、リスクを恐れずに挑戦して、最終的に結果を出すことができる自走型人材」とすると、「前職の企業規模やネームバリュー」は直接関係がありません。そういう能力、またはそうした経験があるかどうかです。
新卒で大企業とベンチャー企業のどちらを選ぶのかによって、「キャリア形成のプロセス」は全くの別物になります。就活中に熟考しておきたいテーマのひとつですね。
<余談>
この都市伝説の始まりはおそらく、ベンチャー企業と大企業を天秤にかけ、悩んだ末に大企業に就職した人が、「自分の決断は正しかったんだ」と自己肯定するために思いついたことなのでしょうね…。